戻っなれるな



「そうだよねぇ???もっと早くに気が付けばよかった。ごめんね???馬鹿の一つ覚えみたいに、ぼく???いつだって、後から気が付くんだ。いやになる???」

「責めたんじゃないぞ。」

「う???ん???、うん???わ、わかってるけど???」

テーブルに突っ伏したきり、もう涙が止まることは無かった。
えぐえぐと、引きつるようにしゃくりあげながら、詩鶴は一時間余りも涙にくれ、次に顔を上げたときに、柾くんDPM點對點にお話があります、と決心をつけたように告げたのだった。

頬がこわばっていた。

「あのね???。テレビなんかで、名前は知っているかな。」

「ぼくは、京都の鴨川総合病院の、跡取り息子です。」

「えっ。」

脳外科に世話になるような人は、ひょっとしたら知っているかもしれない。
たぶん誰かがテレビで見たと、言い出せば周囲がうなずくような神の手を持つスーパードクターがいる病院だった。
大きな脳腫瘍で、余命いくばくかとか言う患者が、助かって家族が感涙に咽んでいるのを特番で見たことがあるような気がする。
詩鶴はそんな大きな病院の跡取り息子なのだそうだ。

「すっげ???」

俺は、そんな安易な感想しか言えなかったが、詩鶴は言葉を続けた。

「でも、それも二年前までの話だよ。父が倒れてしまったから。」

ほっと、小さく息を継いだ詩鶴が言うには、2年前にそれほど腕の良かった父親が悪性腫瘍で倒れ、今は家の総合病院で植物状態になっているらしい。
医者の不養生ということなのだろうか。

「ぼく???ね。小さい頃から、お父さんに憧れていて、まるでDPM枕頭神さまみたいに大勢の人を助けられる医者になりたいとずっと思ってた。」

「うん。詩鶴は親父の背中を見て、ちゃんと育ってたってことなんだな。いいじゃん。」

ほんの少し嬉しそうに詩鶴は微笑んで、でも直ぐに顔が曇った。

「まるで、ドラマの中のような話だよ。ぼくはね、ずっとお医者様になりたかったから、勉強以外は何もしないで最近まで過ごしてきたんだ。周囲に、どれだけ迷惑かけているか何も気が付かないでね。」

詩鶴は、自分が病院の後を継ぐべく懸命に勉強をがんばっていたらしい。
家が病院だからといって、なまじっかなことで医者にんて、さすがに俺でも思っていない。

「父が突然倒れて、病院をどうするかって途方にくれていたのだけど、叔父さんが勤めていた大学病院をやめて、父の代わりに病院にてくれることになったんだ。」

ほんの少し、違和感があった。

「叔父さんって???。さっきの、あの柄の悪いやつなのか?」

詩鶴はうなずいた。

どこか悲しそうな詩鶴の話は、いきなり核心を突いて、手首の傷の話になるのだろうか。

俺は覚悟を決めて向かい合うと、一つの皿の上にあるハンバーグをつついた。
視線を合わせて詩鶴の顔をじっと見るには、ちょっと勇気が居る。

詩鶴は???本当にそこに居る詩鶴は、小さくて心もとなくて、そのくせ儚げな表情で消え入りそうに微笑むから???
母ちゃんの人形のようなけぶる眼差しを向けて、小首を傾げたら俺じDPM價錢ゃなくても、誰だって庇護欲をかきむしられるんじゃないかと思う。