戦うの背負い


元々、長く戦列を離れていた西郷には、指揮は不向きだったのかもしれない。
西郷頼母は決死實德の覚悟で単騎、敵陣に打って出ようとしたが周囲はこれを止めている。
指揮に慣れていない西郷頼母を選んだ、容保の人選が適切ではなかったと言えるかもしれない。
鳥羽伏見の戦で古い戦の方法が役に立たないとわかっていながら、何故指揮官を頭の固い西郷にしたか。
何故、京都で結果を出した若い山川大蔵を呼び戻し、抜擢しなかったのか。
そこにはやはり、旧態然とした会津の考え方があった。
会津の上層部はまだ古い考えに縛られていて、若手の登用に積極的ではなかったといえる。
その上、会津に入るには必ず通らなければならない橋を落とそうとしたが、新政府軍の進軍が早すぎて破壊が間に合わなかった。石橋の頑丈さが仇となった。

直正は手勢を率いて、白河へ入ろうとしたが既に陥落した後だった。

「白河が落ちたか……」

本陣から城へ戻ってきた容保は、報告を聞くと、ぎり……と、唇をかんだ。
斥候が伝えて来るのは、各地での敗戦ばかりだ。
白皙の支付寶貴公子は疲れ果てていた。

*****

ついに新政府軍が迫り、城下では火急を告げる早鐘が激しく打ち鳴らされた。
城下は、荷物をもって城へ集まる人々でごった返していた。

「半鐘がなっています。母上。早くお城に行きましょう。直さまが早鐘が鳴ったら急ぎなさいとおっしゃったのです。お爺さまは、一衛がますから、お支度をお願いします。」

いつも通り、寝たきりの舅に粥を炊く母の背に、一衛は声を掛けた。
大八車を手配したかったが、どこも他所に貸し出すほどの台数はなく用意できなかった。一衛は本気で祖父を背負って城へ入る気だった。

「あの……母上、どうかされたのですか?」

落ち着いた母が、何故か急いでいないのが不安だった。

「お急ぎ下さい。、時間が来たら城門が閉まってしまいます。」

母は、しゅっと襷をほどいた。

「一衛。あなたは一人でお行きなさい。母はお爺さまと、この家に残ります。あなたはお城に入り、しっかりと父上の分もですよ。よろしいですね。」
「え……でも……上士の家の者は皆、お城へ入るようにと實德金融言われています……。」
「何をうろたえているのですか。こちらにいらっしゃい。お爺さまにお別れのご挨拶をするのですよ。」
「……あい。」