嫌が良あるだ



答えは諾(だく)と決まっていた。
これからも、劇団醍醐の旅回りは続く。希望を持たないで生きて行けるはずもない。

「いいか、大二郎。縁を結ぶってことは、互いに見えない糸でつながっているという骨膠原事なんだ。」

「糸……?切れない?」
「いいさ……おいらには、上と下の目蓋を合わせ、じっと目を閉じてりゃおっ母さんの顔が浮かぶんだ……。おっ母さんに会いたくなったら、おいらこうやって、しっかりと目をつぶるんだぁ……。」

「大二郎。そこで、さあちゃんの顔を浮かべてみな。」

「おっ母さ~ん…………」

恋しい母の面影を求めた忠太郎の目蓋に、恋しいさあちゃんの顔が浮かんだ。
ぽろぽろと、涙が頬を転がってゆく。

「……さあちゃ~~~~~~~んっ!!さあちゃ~~~~ん!!……ああぁ~~んっ……さあちゃん~。」

「そうだ。よしよし、大二郎。これが人を恋うってことなんだ。忘れずに覚えておきなよ。」

「さあちゃ~ん……。」
「はい。売出し中の柏木醍醐でございます。こちらは、倅の柏木大二郎と申します。」

大二郎は頭を下げた。

「嘘なもんか。ほら、見てみな。お前がしょっちゅう吸ったせいで、羽鳥の乳首bicelle 好用は男のくせにでかいだろう?」

ぐいとTシャツをたくし上げたら、羽鳥があわてた。

「醍醐さん!怒りますよ!もう~。こっちは、ハンドル握ってるんですからね。」

「本当のことじゃないか。ほら、大二郎、おっ母さんのおっぱいだぞ。」

「やめてくださいったら!おれ、あのころは大二郎が泣く度、本気で乳が出ればいいのに思ってたんですからね。」

大二郎は乳飲み子の役で、常に舞台に出ていた。楽屋におけばぐずぐずとよく泣く子供だったが不思議と舞台の上では機かった。
出ない乳を含ませた姿に、客席は大いに笑ったが、羽鳥は大二郎が不憫で本気でこっそり泣いていた。

そんな話を笑う醍醐も羽鳥も、今はあえて「さあちゃん」の話は口にしない。いつか、あの温泉街のホテルで興行することが有れば、会う事もろうと思って居る。
一座には毎日新HKUE 好唔好しい出会いが有り、忙しない別れがあった。